

私たちは、「動物福祉を最優先し、科学的根拠に基づいてトレーニングをする」ことを目指します。

「罰」や「強制」を安易に使う副作用
■強いストレスを与え、恐怖心を増幅させる
「罰」を使用することで、動物は恐怖や不信感を覚え、より強い攻撃性や怯えた態度に変化するリスクが高まります(Herron et al., 2009)。
■学習効率が落ちる
動物に恐怖や痛みによって無理やり「言うことを聞かせる」ことは、「従順」になったように見えるかもしれません。しかし、実際は飼い主を避けたり、隠れて問題行動をするようになったりする可能性があります。
近年の研究によると、「正の強化」を中心とした方法の方が、学習が安定し、動物のストレスレベルも低く抑えられることが分かっています(Ziv, 2017)。

私たちは「動物に選択肢を提供する」ことを重視します。
これは、ただ単に「動物に自由を与えたい」という感情論ではありません。
恐怖や攻撃行動を根本的に改善するうえでの理論的な根拠があります。

■「逃げる」「戦う」などの本能的反応が起きる
動物の脳は、恐怖を感じているときほど複雑な学習や判断が難しくなることが分かっています。このストレスによって、「逃げる」「戦う」といった、いわゆる防御的・攻撃的な行動に転じやすくなります。
■安心して「するべき行動」を学びやすい
動物が安心してできる行動を「自分で選べる」ようになることで、脳はより冷静に周囲を判断できるようになります。結果的に不必要にや攻撃等をする必要がなくなります。
もちろん、「選択肢」を提供するといっても、動物を放任するわけではありません。
私たちは、動物にとっての「危険」を取り除き、「適切な行動をしやすい」ようにサポートすることが重要です。
動物が自らの行動をコントロールし、自分自身の選択によって学び、適応する力を育むことが大切です。

自分の行動が外の世界に影響を与えられることは、あらゆる生物にとって基本的な欲求であり、
それこそが行動の本質です。
~Grisha Stewart, 2014~
※グリシャ・スチュワートが認定するCBATI(ドッグトレーナー)は、動物の安全を確保しつつ、適切な行動を選択できるように最大限サポートします。

従来の問題行動への対処は、「叱ってやめさせる」「抑え込む」といった動物を支配することが中心になりがちでした。
人間の都合だけで動物を罰したとしても、動物は「なぜダメなのか?」「代わりに何をすればいいのか?」が理解できず、その結果、ストレスによって別の問題行動をしたり、さらに深刻化したりする恐れがあります。
近年では、「食べ物を使ったトレーニング」が一般的になりつつあります。
しかし、その一方で「食べ物を使えば、動物にとって優しいトレーニングである。」という考え方のもと、「人間がしてほしいこと」ばかりに注目し、動物の選択を尊重するよりもコントロールに重きを置く傾向が依然として見受けられます。

私たちは「新しい望ましい行動を建設的に作り出す」ことを重視します。
建設的アプローチ(Constructional Approach)では、「問題行動をただ取り除く」のではなく、「新たな望ましい行動レパートリーを作り出す」ことを目指します。
動物の持つ行動レパートリー(現在できること)を活用しつつ、少しずつ望ましい行動を形成していくことで、動物にとってストレスの少ない学習体験を提供しようとするアプローチです。

「問題行動をマイナスにする」発想ではなく、
「望ましい行動をプラスに積み上げていく」考え方への転換です。
※Dip.ABSTの認定をされた動物の行動コンサルタントは「建設的アプローチ(Constructional Approach)」を採用します。
STEP 1:目標行動の設定
STEP 2:現在の行動レパートリーと環境の分析
STEP 3:スタート地点の設定
STEP 4:段階的シェイピング
STEP 5:データの収集と評価
STEP 6:プランの調整
STEP 7:行動の定着と一般化

飼い主は、動物の一番の理解者であり、教育者です。
もし飼い主だけで対処が難しい場合は、専門家と協力することで、より深く動物を理解し、動物を良い方向に導くことができるでしょう。
■動物の観察:
「どのような場面で」「どのような行動をしたのか」観察し、記録しておくことが大切です。そうすることで、動物の行動を分析し、改善へのステップを正確に組み立てることができます。
■ボディランゲージの理解:
各動物種の「ボディランゲージ(感情表現)」を理解することで、日々の動物の行動の意味をより深く理解することができるようになります。
■プラン実践:
専門家と一緒に組み立てたプランをコツコツ実践していきましょう。また、必要に応じて、環境を調整することも欠かせません。
■最新の科学的知識をアップデートし、飼い主をサポートする:
専門家は、常に最新の情報にアップデートできるよう継続学習は必要不可欠です。そうすることで、より効率的かつ迅速なアドバイスができるようになります。
■飼い主をサポートする:
距離や刺激量、ステップの分け方などを客観的視点で調整し、飼い主と動物がモチベーションを保てるよう最大限サポートします。
■他専門家(獣医師など)との連携:
動物の「問題行動」に「健康問題」が大きく関わることがあります。そのため必要に応じて、獣医士などの専門家と連携が必要になることもあります。

「Family Dog Mediation®(FDM)」認定者は、「ドッグトレーナー」 という枠組みを超えたアプローチを行うことに注目されています。
犬の行動を取り巻く複合的な要素を「L.E.G.S.モデル」を使用して、分析します。
犬と人の両者を理解し、お互いのニーズが合致するよう仲をとりもつことで、従来のトレーニングだけでは解決が難しい問題にも取り組むことができます。

問題行動は、まるで魔法のように一瞬で「改善」することは基本的にはありません。
大切なのは、小さなステップで成功を重ねていくことです。
成功体験を積めば積むほど、動物も自信を持って学習できるようになります。
吠えや破壊などの「表面的な行動」だけを見て決めつけるのではなく、「なぜその行動をするのか?」深い原因を探ることが大事です。
トレーニング理論や動物福祉の考え方は日進月歩で、現在も研究や情報がどんどんアップデートされています。
飼い主や専門家が「自分も学び続ける」ことで、動物との生活は必ずより良い方向に変化していくはずです。
■BAT(Behavior Adjustment Training)関連
ーグリシャ・スチュワート公式サイト
ーグリシャ・スチュワート・アカデミー
■Companion Animal Sciences Institute (CASI)
ーABST(Animal Behavior Science & Technology)認定プログラム
ーMACMP
■FDM(Family Dog Mediation)関連
ーキム・ブロフィー公式サイト(Family Dog Mediation®)
▼L.E.G.Sモデルの基本解説
▼科学的根拠のある行動アプローチの詳細
参考文献
・Herron, M.E., Shofer, F.S. and Reisner, I.R. (2009) ‘Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors’, Applied Animal Behaviour Science, 117(1–2), pp. 47–54.
・Ziv, G. (2017) ‘The effects of using aversive training methods in dogs—A review’, Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, 19, pp. 50–60.