手作り食を提供するためのロードマップ

cat and dog

動物に手作り食を提供する場合、どのようなステップで進めて行くべきかのロードマップをご紹介します。

  • 栄養素について理解する
  • 栄養要件について理解する
  • レシピの作成
  • モニタリングと調整

ステップ1:栄養素について理解する

動物の手作り食を作るうえで、その動物に必要な栄養素を理解しておくことは非常に重要です。

犬や猫そして馬に手作り食を提供する場合に使用する栄養要件は「NRC」が一般的です。

栄養の過不足は、動物の成長の遅延、免疫力の低下など様々な問題を引き起こすリスクが高まります。

したがって、栄養ガイドラインに記載されている栄養素の働き、そして栄養要件を理解することは、動物の健康をサポートする食事を提供するうえで必要不可欠です。

栄養バランスのとれた食事を動物に提供することは、動物の健康を維持、疾患のコントロールをするうえで非常に重要です。

また、各動物における提供してはいけない食材もあわせて理解しておきましょう。

〈栄養素の学びの第一歩〉

栄養素といっても非常に幅広いため、どこから学んだら良いのか迷うかもしれません。


まずは、必須栄養素について、犬や猫の健康にどのような影響を与えるのかを理解するところから始めてみてください。また、各栄養素は、どれぐらいの量が必要であるのかも理解する必要があります。

動物の栄養素については、専門書やNRC書籍などで学ぶことができます。

もしかしたら一般的な飼い主にとって、専門書の内容を理解し、実践することは難しいかもしれません。

その場合は、専門家と協力しながら、動物のレシピを構成するか、セミナーなどに参加してみる方法もあります。

※NRC(National Research Council)の公式文献「Nutrient Requirements of Dogs and Cats」は、犬や猫の詳細な栄養要件が記載されています。
このガイドブックはオンラインで購入できます。(英語のみ)

このステップを理解することは、栄養バランスのとれた手作り食を動物に提供する第一歩です。

次のステップへと進むためのしっかりとした基盤を固めることに繋がります。

ステップ2:栄養要件について理解する

動物の手作り食を作るうえで、その動物に必要な栄養要件について理解することは非常に重要です。

栄養要件とは、動物が健康を維持し、正常に成長し、日々の活動を行うために必要な栄養素の量を指します。

これは、個体の年齢、性別、成長段階、健康状態、活動レベルなどによって異なります。

詳細な数値などについては、各動物の栄養ガイドラインが参考になります。

また、このウェブサイトでは犬と猫に必要な栄養素の量を自動で計算できるツールも提供しています。(NRC, 2006)

〈栄養要件の重要性〉

成長と発達
幼年期や青年期は、骨格や筋肉、内臓など体の主要な組織が急速に成長します。そのため、成体よりも多くの栄養所要量が必要です。

特に幼年期は、栄養の吸収と代謝の恒常性が未発達であるため、栄養の過剰摂取が健康に大きな影響を与えることがあります。

以上から、特に仔犬や子猫の食事は、特に慎重に進めて行く必要があります。


健康維持
成犬や成猫は、活動レベルや代謝が基本的には安定しています。栄養バランスを適切に調整し、肥満などの健康問題が起きないように調整することが大切です。

また、シニア期に入ると栄養要件の調整がさらに重要になります。


疾患のコントロール
特定の健康問題(腎臓病、心疾患など)を持つ動物は、健康な成体とは異なる栄養要件が求められます。

各健康問題の栄養要件を理解し、調整することが、症状のコントロールをするために非常に重要になります。

このステップを理解し実践することは、動物の個々のニーズに応じた適切なケアを提供するための基盤となります。

ここまでの情報を整理することで、やっとレシピ作成の準備が終了しました

ステップ3:レシピの作成

動物に必要な栄養素と栄養要件の理解を深めることが出来たら、次はこれらの知識を活かして手作り食のレシピを作成します。

このステップでは、動物に必要な栄養素が適切な割合で含まれるように計画を立てます。

各動物の年齢、健康状態、活動レベルに応じて栄養要件が異なるため、レシピはこれらの要因を考慮に入れて調整する必要があります。

〈個々のニーズに合わせる〉

■カロリー:

動物に必要なカロリーを計算します。

カロリーは様々な要素によって変動します。動物に必要なカロリーを正確に知るためには、今までの摂取カロリー、BCSなどを参考にします。

また、動物が肥満もしくは痩せている場合は、理想体重に達するように、カロリーの計画を立てる必要があります。


■栄養素の比率と食材:
三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)の比率を決定し、それに基づいて、必須栄養素を提供できる食材とサプリメントの組み合わせを選びます。

また、ミネラル間の相互作用、特にカルシウムとリンの理想的な比率を適切に維持することも重要です。

他の栄養素の吸収を阻害する栄養素も存在するため、これらの相互作用も考慮してレシピを組み立てます。


■嗜好性と調理方法:
動物の嗜好性を考慮し、適切な食材と調理方法を選定します。

調理方法は、食材に含まれる栄養素に影響を与えるため、レシピを作成するときに調理方法も決めておく必要があります。

また、手作り食は、人にとって提供しやすいことも重要な要素です。そのため、提供する人にとって調達しやすい食材、そして調理方法も考慮する必要があります。

作成したレシピは、季節の変わり目や動物の健康状態の変化に応じて、定期的に見直しと調整が必要です。

ステップ5:モニタリングと調整

レシピ通りの手作り食を動物に提供したあとは、モニタリングし、必要に応じて調整を行うことが重要です。

〈健康状態の確認〉

動物の体重、皮膚と毛、便のスコアなどを定期的に観察します。

これらの指標は、食事が動物の健康にどのように影響しているかを理解する1つの要素になります。

もし、体重の急激な増減、皮膚の問題、消化不良などが見られた場合は、レシピの見直しが必要です。

食事日記をつけることは、動物の健康をモニタリングするのに役立ちます。どのような食事をしたときに、体調に影響があったのかを正確に知るために重要なデータとなります。

獣医師による定期的な健康診断も、その食事が動物に合っているかどうかの良い指標となります。特に手作り食に切り替えた初期段階は、獣医師と連携して動物の健康状態をモニタリングすることが重要です。

このステップを通じて、より良い食事を動物に提供することができます。

最後に、栄養学に関する最新の研究は日々更新されています。現在ある情報が必ずしも絶対に正しいとは限りません。

そのため、定期的に情報を更新し、動物のレシピに反映させることは重要です。